頭を打って心配
- ベビーカーから赤ちゃんが落ちてしまった
- スポーツ中や友達と遊んでいる際、子どもが頭を打ってしまった
- 階段から足を滑らせ転んで頭を打ってしまった
- ご高齢の方が転んで頭を打ったとき
- 交通事故で頭を打ってしまった
ご自身やご家族、周りの人が頭を打つと心配になるものです。病院を受診するタイミングや注意する点を以下で解説します。
受診をするタイミング
脳内に異常が
発生している
可能性が高いケース
- 何度も嘔吐する
- 頭を強く打ち付けた
(高い場所から落ちた、大きい何かとぶつかったなど) - 頭痛が治まらない
- フラフラしている、ぐったりしている、ボーっとしている
- 会話や言葉がおかしい
- ケガした前と後の記憶が不確か
- 手足の動きがおかしい
- ひきつけ、痙攣がある
頭に強い衝撃があった後や衝撃が軽くても様子がおかしい場合、何らかの異常が頭の中で起こっている可能性があります。特に、幼い子どもは自分から痛みを伝えることが難しいため、注意深く様子を観察する必要があります。全身を観察し、頭以外にもぶつけたところがないか、その部位を触るとすごく痛がるか、なども確認してください。頭を打った後、様子が異常であったり不機嫌であったりした場合、早めに当院までご連絡ください。
ケガの処置が
必要なケース
- 傷から血が止まらない
- 頭の皮膚が裂けている
- 血の巡りが良い頭の皮膚にケガをすると、小さな傷でも大量に出血する可能性があります。
病院でケガの処置が必要になるのは、圧迫しても血が止まらない場合です。頭の皮膚が裂けている場合は、早急に縫合を行い、出血を止め細菌感染を防ぐことが重要です。
顔の骨が折れている疑いがあるケース
- 頬や目の周辺の腫れが強い
- 鼻が曲がっている
- ものが重なって見える
- 鼻血が出た
- 強い打ち方をした
- 鼻から水みたいなさらさらしたものが出た
顔の骨が折れてもすぐ処置する必要はありませんが、状態によってすぐに実施するケースがあります。不安な方は、なるべく早く病院で診察を受けましょう。
頭部打撲後にはどんなことが起こりますか?
頭を打つと、皮下血腫(たんこぶ)、頭皮の外傷、頭蓋骨・顔面の骨折、頭蓋内の出血、頚部の骨や筋肉の損傷、脳や神経の損傷などが起こる可能性があります。
「たんこぶ」だったら問題なし?
たんこぶだったら心配ないとお考えの方も少なくありません。しかし、たんこぶは頭に強い衝撃があってできた皮下の出血の結果ですので、絶対問題ないとは言い切れません。
頭蓋内出血には
要注意
頭部への強い衝撃に注意が必要で、頭蓋内出血は特に危険です。緊急治療が必要なケースの多くは、頭蓋内出血に関連しており、生命の危険や後遺症のリスクが高まります。頭部のケガも皮膚などの外傷同様、衝撃後に出血が生じ、出血が多いほど症状が早く現れる可能性が高まります。しかし、症状が遅れて現れる場合もあるため、様子をじっくり観察する必要があります。頭部を打った後、特に24時間以上経過しても様子に変化がないかを確認しましょう。よく、頭をぶつけてしばらくしてから頭の中に出血することがある、と言われることがありますが、「慢性硬膜下血腫」といい、別項でお話しします。
外傷性頭蓋内出血の種類
頭蓋内出血には、下記のような種類があります。
- 硬膜下血腫
- 硬膜外血腫
- くも膜下出血
- 脳内血腫
- 脳挫傷
- 脳室内出血
「脳震盪」とは?
脳震盪とは、頭を打った後に意識が短い間失われる状態を指します。言動が支離滅裂になり、ふらついたり、ボーっとした状態が持続する場合、頭蓋内に異常がない場合でも脳震盪の可能性が考えられます。頭部打撲した当日にすっかり元通りに元気になられれば脳震盪として経過観察でいいのですが、翌日になっても症状が継続する場合には脳挫傷といって脳に傷がついている可能性があり、脳神経外科での検査が必要です。
脳震盪が治まるまで、医師の指示に従い、再び頭を打たないように穏やかに過ごす必要があります。特に異常が検査で見つからなくても、安静が大切です。
頚椎損傷にも注意してください
交通事故や転落、スポーツなどで首の骨である「頚椎」や神経の「頚髄」が損傷すると、頭蓋内出血と同様に命に危険が及びます。頭への強い衝撃が加わると、同時に首の骨にも強い衝撃が及び、これが頚椎損傷を引き起こします。症状が深刻な場合、呼吸に関わる神経異常や四肢の麻痺が現れることがあります。
頭を打った後は、頭を動かすことは避け、頚椎に異常がないことが確認されるまで慎重に行動するようにしてください。
顔の骨が折れた場合
顔に強い衝撃が加わると、目の周り、頬、鼻、顎の骨が折れることがあります。このようなケースでは、食事時にかみ合わせに違和感を感じたり、顔の感覚が異常になったり、口が開きにくくなったり、物が重なって見えるなどの重篤な症状が発生する可能性があります。また、鼻の骨が折れると鼻血が出ることがよくあります。骨の状況を確認するには、MRIよりもCT検査が有用です。
頭の皮膚の傷
頭の皮膚には多くの血管が走っています。そのため、小さな傷でも出血が多くなることがあります。もし土などで患部が汚れた場合、水で洗い流し、タオル、ガーゼ、ティッシュなどを使って出血を止め、落ち着いたら病院を受診してください。頭に衝撃を受けた当日は、体調の変化などに注意を払う必要があります。何か不安なことがあれば、すぐに病院に相談してください。
頭部打撲の後の検査は?
頭部CT
- X線を照射し、頭や顔の骨の状態を確認する際に行われます。
- 頭蓋内や脳内の出血有無を確認できます。・特に骨を詳細に調べたいときにはMRIよりも有用です。
- MRI検査に比べ検査時間は短く、20秒ほどで終了するため、認知症のご高齢の方や幼い子どもも受けられる検査です。
MRI
- 脳の傷、少量の出血を発見することに優れています。
- 頭を打ってすぐや打って時間が経った状態でも検査できます。
- 造影剤を用いらずに脳の血管の異常を見つけ出すこともできます。
- 頚椎損傷の可能性がある方を詳しく調べる際にも有効な検査です。
- 機械の中で15~20分ほど動かないで頂きたいので、認知症の方や子ども、狭い場所が苦手な方は検査できない可能性があります。
傷の手当ては?
傷が汚れている場合、よく流水で洗い流してください。止血しても出血が止まらないときは、ハンカチやガーゼなどで圧迫を続けながら病院を受診しましょう。
縫合が必要な場合は、以下のような状態です。
- 止血しても止まらない場合
- 顔や頭の皮膚が裂けている場合
当院では縫合のための処置室も完備しています。縫合した次の日に傷を確認し、約1週間後に縫合した糸を抜いていきます。
頭部打撲後に
様子を見る場合には
どうすればいいですか?
頭を打ってから
24時間は注意深く様子を見る
頭を打った後は、頭の中で出血が起こる可能性もあるため、注意が必要です。出血の量が多くなれば、その結果として脳が圧迫され、症状が24時間以内に現れることがあります。したがって、12~24時間以内は常に注意深く様子を観察してください。患者本人はできる限り体を動かさないようにし、周りの家族は24時間を通じて患者の様子をこまめに観察してください。その際、以下のような症状がないかを特に注意深くチェックしましょう。
- 何度も嘔吐している
- 頭痛が治まらない、痛みが増している
- ひきつけや痙攣がある
- 元気がない
- 歩き方がおかしい
- ボーっとしている
- 会話にならない
1,2ヶ月後に
「慢性硬膜下血腫」
が起こる可能性がある
頭を打った後、数週間後~数ヶ月後に頭蓋の中で出血が起こる可能性があります。これは慢性硬膜下血腫と呼ばれ、頭蓋骨と脳の間にゆっくり血液が溜まり、、脳に圧迫をかける状態を指します。この症状は主に高齢の方に見られますが、稀に若い世代でも発症することがあります。
次の症状がある場合は、
早めに病院を受診してください。
- 手足に力が入らない
- 認知症、物忘れに似た症状がある
- まっすぐ歩けない
- 頭の痛みが強くなってきた
- ボーっとしている、ふらふらする