てんかんとは
てんかんは「けいれん発作」を繰り返す脳疾患を指します。有病率は100人に1人とされており、小さなお子さまからご高齢の方まで幅広い年齢層の患者さんがいます。
てんかん発作は、脳の異常放電により起こる神経障害で、意識消失やけいれんなどの症状が現れます。発作の種類や程度は個人によって異なり、数秒から数分間続くことが一般的です。
てんかんの重症度は、小児の良性てんかん(大人になれば自然に治癒)から、抗てんかん薬では制御しきれず手術が要るケース、発作が続くことで脳機能が影響を受ける難治てんかんまで、広範囲にわたります。
てんかんの分類
てんかんは、「全般てんかん」と「部分てんかん」に大きく分類され、両方の症状が混在していたり、分類ができなかったりすることもあります。さらに、発作の原因に応じて、脳に明確な異常がない「特発性」と、脳に病変がある「症候性」に区分されます。
全般てんかんでは、脳の両側が同時に興奮し、「全般起始発作(全般発作)」が起こります。脳波には全体的な異常波が観察され、このタイプのてんかんには欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作、強直発作などが含まれます。
焦点てんかんでは、通常片側の脳の一部から始まる「焦点起始発作(部分発作)」が発生します。この焦点が一つだけでなく、二つ以上の多焦点性であることや、片側の脳の広範囲を巻き込むこともあります。焦点の場所により、さまざまな発作症状が現れます。
てんかんの症状
一般的に、てんかんは同様の発作症状が何度も繰り返し発生します。以下に、てんかんの部位ごとの発作症状の例を示します。
焦点てんかん
焦点てんかんでは、脳の特定の部位で異常な興奮が発生し、その場所によってさまざまな発作症状が現れます。
側頭葉てんかん
- 口でぴちゃぴちゃと音を出す
- 突然ボーっとして反応がなくなる
- ムカムカして吐き気をもよおす
- 周囲を探るような仕草
発作が脳の一部に限定されている場合、全身けいれんが発生しないことがあります。また、発作自体に気づかないことがよくあり、外部からはてんかんの症状とは見えないこともあります。特に高齢者では、てんかんの症状が認知症と誤解されることもあるため、医療機関にて適切な診察を受けることが重要です。
前頭葉てんかん
- 夜中に突然泣き叫ぶ
- 突然足をバタバタさせる
- 何も面白くないのに笑い出す
- 顔、手、足の一部がピクッとする
意識がなくなることは稀ですが、発作が大きくなると意識レベルが下がる場合があります。
後頭葉てんかん
- 視界に光が見える
- 視界に雲のようなものが見えてくる
- 目が見えなくなる
視覚発作という目に関連する発作症状が頻繁に観察されます。
全般てんかん
全般てんかんでは、以下のような多くの発作症状が見られます。
全般てんかん
- ミオクロニー発作、スパズム発作:急に体の一部がピクンする
- 強直発作:体全体が硬くなる
- 脱力発作:体の力が抜ける
これらの症状は、通常、全般てんかんの発作と関連づけられていますが、焦点てんかんでも発生することがあります。
てんかんの原因
てんかんの原因は、脳の一部の形態的異常、脳卒中、脳腫瘍、脳の外傷、脳症、脳炎、脳梗塞、髄膜炎など様々です。
ただし、原因が不明なてんかんも多く存在し、まだ完全に解明されていない部分があります。
てんかんの治療
基本的には、抗てんかん薬を服用して頂き治療を行います。
多くの場合、1種類の内服でてんかん発作を抑制できますが、発作がコントロールできない場合にはお薬の量を変えたり、種類を追加して対応します。