脳卒中とは
脳卒中は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を指し、日本ではがんや心疾患に次ぐ死因として重要です。また、要介護や寝たきりの主な原因でもあります。
脳卒中は突然発症し、前兆がほとんどないため、予防と脳の健康状態を把握しておくことが重要です。
脳卒中の3つの病型
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まって脳細胞に血液供給が途絶える疾患で、酸素と栄養の不足から脳細胞が死ぬことがあります。脳卒中の主要な原因で、症状は手足の麻痺、言語障害、視野障害、意識障害など多岐にわたります。
通常、発症前に予兆はなく、時折、一時的な麻痺や視野障害などの前兆が現れることもあります。脳梗塞のリスクは脳や脳血管の状態を確認することで予測でき、生活習慣病の管理が予防に鍵を握ります。
脳出血
脳出血は、主に脳内の小さな血管が破裂し、脳内で血腫を形成して脳を圧迫し、脳細胞が破壊される疾患です。一度破壊された脳細胞は修復されることはありません。
脳卒中の中でも2割を占め、手足の麻痺や麻痺、意識障害などの症状が主に現れます。発症は突然で、予兆はありません。
高血圧は脳出血の主要なリスク要因であり、適切な管理が必要です。また、脳の血管異常、認知症、脳腫瘍なども脳出血の原因となり得ます。これらのリスク因子は、脳の状態を評価するMRIなどの検査で確認し、予防することができます。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の表面に出血が生じる病気で、脳卒中の1割を占めます。主な症状は急激な頭痛と意識障害です。
くも膜下出血は通常、脳動脈瘤(血管の瘤)の破裂が原因です。これらの瘤は脳の大きな血管に発生します。くも膜下出血は急性の状態で発症し、発症者のうち約1/3が死亡し、1/3が後遺症を持ち要介護が必要となります。しかし、脳動脈瘤を検査で発見し、治療することで発症を予防することができます。
また、家族性の脳動脈瘤の方も多くお見受けいたします。ご親族様にくも膜下出血を罹患された方がいらっしゃいましたら脳動脈瘤があるかどうかのチェックのため、MRI検査を受けることをおすすめいたします。
当院には東京慈恵会医科大学脳血管内治療センターの石橋教授が毎週火曜日に外来を行っております。脳動脈瘤治療のご相談やセカンドオピニオンもお受けいたします。
脳卒中の症状
脳は異なる部位ごとにさまざまな機能を持っており、脳卒中が発生した部位によって様々な症状が生じますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。
- 左右どちらかの手足に力が入らない
- 左右どちらかの手足に痺れがある、感覚が分かりづらい
- うまく話せない
- ものがつかめない
- 人の話が分からない
- 片側の顔面が歪む
- 言葉がスムーズに出ない
- 片方の目が見えない
- 歩きづらい
- 今まで味わったことがない強い頭痛
- ものが重なって見える
- 目の前の一部が見えなくなる
これらの症状は1つだけが出ることもありますし、複数の症状が同時に現れることもあります。また、症状が重症化すると意識が悪くなることもあります。もし自身や身近な人に、これらの症状が観察された場合、早めに専門医へご相談ください。
脳卒中を発症したときには
迅速にMRIやCT検査を行う準備が整っています。脳卒中の症状が疑われる場合、当日中に検査を実施し、正確な診断を行います。
脳卒中の治療が必要と判断された場合には、速やかに近隣の高次医療機関への紹介手続きを行い、治療をスムーズに開始できるような体制を整えています。
脳卒中の予防について
脳卒中は適切な治療が遅れると後遺症や命にかかわるリスクが高まります。疑わしい症状がある場合、脳卒中の可能性があればできるだけ早く専門医へご相談ください。早期の診断と治療は後遺症の軽減につながる可能性があります。特に脳梗塞の場合、症状発現から4.5時間以内にt-PA療法や数時間以内にカテーテル治療などの特殊な治療が適用されることがあります。しかし、これらの治療は厳密な条件を満たす必要があり、すぐに受診しても適用されない場合もあります。それでも、脳卒中の症状は進行することがあるため、早期の点滴治療などを開始することが重要です。脳卒中を発症する前に、私たちにできることもあり、それが予防です。万が一、脳卒中と診断された場合には適切な高次医療機関をご紹介いたします。
脳卒中を防ぐ方法
脳卒中の5大危険因子
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 不整脈(心室細動)
- タバコ
脳卒中の危険因子として、肥満、過度の飲酒、運動不足などが挙げられます。治療の基本は健康な生活習慣の確立で、規則正しい生活、適度な運動、バランスの取れた食事が重要です。これらの改善が不十分な場合、降圧薬、血糖降下薬、脂質低下薬などの内服治療が検討されます。また、心房細動の場合は抗凝固薬が使用され、血栓形成を予防し脳梗塞のリスクを低減します。正しい治療と予防策を組み合わせることで、脳卒中の発症リスクを効果的に抑えることができます。